セミナー ・その3
生と死を考える会のセミナーより・柳田邦男氏の講演の続き
ある訪問看護師の死(名取市)
遊佐さん(40歳、独身)の看護師さんがALSの難病患者さん(おばあちゃん)のお宅へ訪問看護に出向いて行きました。
途中で地震がきましたが、車なので揺れの大きさの異常を感じ取れないまま患者さんのお宅へ行ったのです。
間もなく大津波警報が出たことを知り、チューブにつながった患者さんを一人で避難させるわけにもゆかず・・・
お爺ちゃんにも手伝ってもらいながら、2階へ運びあげました。
1階にあったものを取りに 遊佐さんは下に下りたのです。
その時 津波が ど~~ん! と来て
そのお家は1階部分を持って行かれ
2階は船のように浮かんで流されたのです。
遊佐さんは数日後に遺体で発見されたそうです。
人間はギリギリになると
他者の為、何か大きなものの為に・・・
自分の命を投げ出してしまうのです。
ものすごく辛いことではあるが、人間の崇高な一面です。
田舎には昔から野仏が村のあちこちにあって、
村人が・・・交代で世話をしていたりします。
こういうのは宗派に関係なく、云わば土着の宗教心とでも云うのでしょう。
医者も、土着の宗教心のような気持ちを持たなければいけない・・・
・・・と、 岡部 健 医師は云っています。
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震災は一人一人に色々な思いを残していきました。
★グリーフワーク(悲嘆の癒しの作業)の困難さ
① 恐怖 ・・・ 命の危機 ・ 死の目撃
② 不条理さ故の 受容困難
③ 罪責感 ・ 自責の念が強い
④ 家、街、仕事、大地の喪失
「心の故郷の喪失」
⑤ 経済的困難
どうやって、町や村を再生させ
どうやって、自分を再生させるのか
人間の命・・・ 精神性のある命の営みの大切さ
★ 生き直す力として大切なもの
① 生れ、育ちと家族のきずな
② 表現する手段を持つ
③ 仕事、社会的活動
④ 他者によるサポート
⑤ 専門家のサポート
⑥ 住宅、町の再建
⑦ 未来へのほの明かり
⑧ 宗教心、信仰
○子供に対する絵本の読み聞かせ
例えば「泣きすぎてはダメだよ」
★ 表現手段を持っていると、生き直すきっかけとなることがある
実例を挙げて話されました
聖路加国際病院・小児科医 細谷先生(俳人でもあり色々される)
≪看取ること 生業として 冬の虹 ≫
エッセイ集 … 「生きようよ」
死を前にしてさえ、優しさ、思いやりを忘れなかった子供たちをみて
僕は きちんと生きなければならないと感じました。
★「星の王子さま」 ・・・ ご存じの方、多いと思います。
・・・ 子供の本だと考えがちだが・・・?
こういう一節がある ( 王子様が自分の星へ帰る時が来て・・)
あまり小さすぎて(僕の星は)見えないから、
あれがそうか? これがそうか? と
探している内に 全ての星が いとしくなってしまうんだ。
この部分が一番大切な文だったのだと気付いた。
これはサンテクジュペリから妻への遺書だったと。。。
私は(柳田氏)息子から誕生日にこの本をプレゼントされた。
それは息子が亡くなる(自死)3カ月まえのことだった。
息子が亡くなってから、街の中で、息子に似た青年をみかけると
「君! 良い人生を生きて行けよ!」 ・・・と声をかけたくなるのです。
★ ベルギーの1冊の本を紹介されました
「でも私 生きていくわ」 7歳の少女の本
「悲しみは消えないけれど 今、私はしあわせ」と結んでいる。
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箇条書きでは、意味が十分に伝わらないと思いますが、お許しください。
辛い体験、悲しみの遭遇などは決してぬぐい去れないものですね。
しかし絶望は、転機になる との意味を含んでいるとお聞きして
どうか、被災された方々、否、被災されなくても辛い境遇にある人達が
絶望を転機として、やがて
悲しみは消えないけど 今、幸せ! と言える日が来ることを
切に願い、祈っています。
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亡くなった訪問看護師さんも、このタイミングで津波が来るとは思っていなかったと思います。
しかし、こういう話を聞きますと、意識的にしろ、偶然にしろ自分の身を投げ捨てて、人を助ける行動に走ることがありますが、一方では津波がきたら「てんでんこ」と言う言葉もあるようにてんでばらばらに逃げなさいと言う教えもあるようで、、、、
実際自分がその立場に立ったらどんな行動をとるのか、、、
決断するのは、ほんの一瞬であり、考えをまとめて動くというのではないでしょう。
結局は、日ごろの自分の考えが行動に出ることになるんでしょうね。
投稿: オラケタル | 2012年7月 1日 (日) 22時14分
普段から、いざという時にはこうする! ああする! と決めていても
実際に自分がどういう行動をとるか?
それはその時が来ないと自分にも分からないことだと思います。
「てんでんこ」の教えは大事だと思います。
この津波の後、耳にする言葉ですが、是非世界中の人々へ広めたい言葉だと思います。
投稿: tomoko | 2012年7月 2日 (月) 09時43分